残雪と花の織り成す朝日岳



2017年7月15日、蓮華温泉より白馬を目指す。

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蓮華温泉から白馬までは2日かかるコースだ。1日目は朝日岳を越えて朝日小屋、2日目は雪倉岳を越えて三国峠で白馬大池からのルートに合流して白馬岳に至る。
両日とも8時間超の長い歩きと1300メートルを超える標高差を登らなくてはいけない。しかしこの程度の標高差はいつも丹沢で歩いているので行けるだろう。と軽い気持ちで出かけた。
蓮華温泉

朝5時、蓮華温泉の駐車場をスタート。
悪天の予報に反し青空が広がっている。
このコース、いきなり300メートルの下りから始まる。スタートから借金を背負うようなものだ。アヤメの咲く「平馬ノ平」をトントンと靴音を鳴らしながら木道を歩く。前面には雪に覆われた朝日岳が見える。あの山まで行くのかと思うと気が引き締まる。
兵馬の平から目指す朝日岳を見る(左側の山)

2時間ほどで融雪で増水している日高地沢を鉄橋で渡り、さあこれから登りの始まり。始めは「カモシカ坂」の急登だ。1歩1歩と足元を見ながら登る。登山道は薄暗い樹林帯の急登。なかなかの苦行だ。
兵馬の平から下り切ったところで瀬戸川を渡る

次に日高沢を渡る。ここまで2時間。

やがて前方の木々の間から空が見えてきた。いよいよ森林限界は近いぞ。
徐々に勾配もゆるやかになり、森林限界を抜け目の前に別世界が広がった。一面のお花畑だ。雪融水の流れる湿原に花々が咲き乱れている。ここまで1時間の急登だった。登山道脇の岩に腰掛けて小休止。流れ出る汗を拭きながら木道の先をみつめる。まだまだ先は長い。
雪が融けて水芭蕉が咲き始める。ここはまだ春が来たばかりだ。

お花畑といくつかの残雪帯を抜けると登山道はゆるい勾配で五輪尾根に向かっている。
五輪尾根は今日のコース中間点。まだ後半の歩きが残っているのになぜか疲労が激しい。このコース、何回も丹沢でシュミレーションしてきたはずだが。どうもおかしい。
五輪尾根の水場で休んでいると登山者が続々とやってきた。どのグループも皆元気に冷たい水に歓声をあげている。倒れ込むように休んでいる私とは大違い。女性もいる。

元気な母娘が私を軽い足取りで追い越していく。荷は軽そうだがピケルをザックに装着している。

一面に咲くイワカガミ

彼らを見ているとやがて自分も元気が湧いてきた。さあ、腰をあげ再び歩き始める。低木対の道に咲くピンク色のイワカガミが疲れを癒してくれる。ほぼ水平の登山道が1時間ほど続く。やがて朝日岳の取り付きに近くなると登山道は大きな残雪帯に入った。
急登の残雪帯

長いトラバース

朝日岳も間近に見えてきた。しかし勾配もきつくなってくる。この先は残雪帯が断続的に続くのが判る。ここではじめてアイゼンを着用。いくつかの急勾配の残雪帯を抜ける砂礫の登山道の先に山頂が見えてきた。もう残雪帯は抜けた。砂礫一面にミヤマムラサキが咲いているのが見える。山頂まで最後の九十九折を登る。すると元気な登山者がびっくりするような速さで追い越していく。つくづくと体力レベルの違いを思い知らされる。
一生懸命に咲くシラネアオイ

山頂への砂礫一面に咲くミヤマムラサキ

15時、ようやく山頂に達する。予定より1時間超の遅れだ。山頂では白馬から来た登山者たちも休んでいる。
山頂では白馬方面からの登山者と合流

さあ、あとは朝日小屋まで下るだけ。木道を下り、残雪帯を渡り、やがて前方1㎞ほど下に朝日小屋の赤い屋根が見えてきた。ネットで見ていたあの朝日小屋だ。私を追い越した先行の登山者たちが小屋を目指して歩いているのが見える。私は最後の残雪帯を慎重にステップを踏みながら下りていく。
朝日小屋が見えた

朝日小屋では小屋番の清水ゆかり女史自ら元気な声で受付をしていた。ここまでどこからきて、明日はどこへいくのか口頭で確認される。部屋には私の名前の書かれた布団を用意されていた。実に丁寧な迎えだ。そしてなによりも美味しい食事がいい。皆お膳を見て感動の声を上げている。サービスの食前酒で全員で乾杯。
小屋前に咲くミヤマキンポウゲ

このご馳走に歓声が上がる

翌日は生憎の天気予報。山々は暗い雲に覆われている。朝食時に女史から間もなく風雨が強くなるので今日の白馬行は控えた方がいいとのアナウンス。食堂の窓から見える木が風に揺れていている。すでに白馬から来る予定客のキャンセルも入っているとのこと。実はそのアドバイスがなくても私は今日は蓮華に戻るつもりであった。昨日の疲れかたを顧みて、白馬までの登りを歩ける自信をなくしていたからだ。この女史のアドバイスは私の迷いと敗北感を取り除いてくれた。今日は蓮華に戻ろう。朝食のあと、白馬頂上宿舎へのキャンセル連絡を依頼。5時半、小屋からでて雪倉岳を振り返り、蓮華への道を歩み始めた。
白馬を背に


振り返ると剣が

今回はなぜこんなに疲れたのだろうか。思い当たることはふたつ。一つは私の加齢によるスタミナ減。もう一つは距離が長いこと。標高差もさることながら長い距離を歩くのはスタミナを消耗させる。あまり詮索せずもう少し楽なコースを選べともう一人の自分が私に説教している。1日5時間が限界かも。
蓮華への帰り、下りは緊張する。

蓮華温泉から雲に包まれた朝日岳を見る

帰りの中央道渋滞

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