雪の山小屋へ
なぜかいつの間にか、「今季は雪の山小屋に泊まる」ことが定めのようになっていた。その為に10本アイゼンとゲーターを揃え、その機会をうかがっていたところ、この週末は土日とも連続して晴マーク。「よし行くぞ」。決意も新たに雲取山に行くことにした。
なぜ雲取山なのか。一言で言えば無難な山だから。適度な積雪、通年営業の山荘、大勢の登山者。それに4年前の春に登ったので山の様子は判っている。今回も前回と同じ鴨沢から登ることにした。小屋も冬季はこのコースを勧めている。
出発
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朝の鴨沢 |
7時30分、鴨沢近くの駐車場に車をデポ。冬の湖面に朝日が冷たく反射している。この時間に出発すれば2時頃には小屋に到着できるだろう。街道から登山道に入るもまだまだ地面が露出して積雪はない。4年前の記憶をなぞりながら、なだらかな勾配を登っていく。木々の間を縫うように続く登山道だが、遠くに目指す尾根が垣間見える。この程度の距離感なら丹沢に置き換えると鍋割山ぐらいかな、などと自分なりの尺度で測りながら歩をすすめる。
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杉林を抜ける登山道 |
やがて登山道はアイスバーン状態となるも、アイゼンは付けずに歩き続け、尾根手前の七ッ石小屋との分岐点に到着したのが10時30分。ほぼ標準コースタイムだ。ここで小休止をとる。真っ白な尾根はもうすぐ目の上に迫っている。下山してくる人はみな防寒スタイルだ。山頂の厳しさが想像できる。よし、靴の紐を締め直し、アイゼンを装着し、気を引き締めて出発だ。
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尾根より下ってきた男。片言の日本語で「クモトリヤマキレイ、コオリ、ユキ」 |
ブナ坂
尾根にようやく登りつめたのが11時30分。ここからはブナ坂と名付けられた広い尾根道となる。雲取山のコース写真には必ずでてくるポイントだ。この広さは防火帯とのこと。今は広い雪原となってる。白い帯が山の向こうに続き、目指す雲取山も見える。ああ、この白く清々しい世界の中に身を置いている感動が湧き出てくる。
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白い帯が続く |
ひゅうひゅうとカラマツ林を吹き抜ける風音とアイゼンの重曹な音の二重奏を奏でながら一歩一歩と歩をすすめること1時間、小雲取山への取り付きで歩が止まる。見上げると正面に小雲取山への急斜面、その左奥に雲取山山頂手前の避難小屋が見える。目の前にせまる傾斜はかなりきつい。
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10本アイゼンの出番 |
躊躇するも、最後の登りと自分に声をかけ、斜面を登る。いよいよ10本アイゼンの威力発揮。しかし残念だが一気に登るほど力は残っていない。まさに最後の力を絞り出しながら一歩一歩と登りつめた。この小雲取山を登れば、あとは山頂までなだらかな登りが残るだけ。
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山頂避難小屋への登り |
遠くに見えていた山頂避難小屋もいよいよ目の前だ。すると今度はなぜか登りつめるのがもったいない気分、もう少しこの感動をとっておきたい。小屋の直下で歩をとめて、登ってきた道を振り返り、自分の軌跡を確認して、避難小屋に最後のステップを踏んだ。時刻は13時45分。小屋の寒暖計をみたらマイナス5度だった。
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歩いた軌跡を振り返る |
山頂
山頂は避難小屋のすぐ後ろだが景色は避難小屋のほうが満喫できる。ブナ坂への尾根道、富士山、大菩薩方面の山々。しばし眺めを目出ながら居合わせたカップルと、「このまま下ってしまうのはもったいないよね」などと会話し、小屋裏の山頂に移動。山頂には競うように東京と埼玉の二本の標識が建てられている。東京の標識には資産番号まで刻まれている。興ざめだ。ここは尖閣か。
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東京都最高峰にて |
山頂で写真を何枚か撮り、そのまま山荘までの下りへと歩を進める。この下りは山の北側となるため、これまでの環境から一変し、暗い日陰の急坂と風。積雪も深い。ペースをいっきに上げて、雲取山荘に到着したのが14時30分であった。ほぼ予定通りの行程で到着。
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山荘に到着 |
雲取山荘
装備をはずし玄関を入ると有名なご主人がフロントで受け付けをしていた。手続きをして、決められた部屋に入ると、なんと部屋にはコタツが二つあるだけ。暖房はこれだけ。いやいやこれからどんどん気温が下がるのに、大変だ。さっそくザックからダウンを出したが、これだけでは足りないことはあきらか。更にもう一枚ダウンの下に着て寒さに備える。
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コタツ |
夕食までの時間はただただ寒さに耐えながらじっとコタツにあたっていた。夕食は4年前とおなじハンバーグ。割り箸で切ろうとしたら割り箸が折れてしまった。食後、山荘の外に出てみると空には星、麓には夜景が輝いていた。
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食事風景 |
下山
翌朝、朝食をとり6時半に出発。気温はマイナス15度。いきなり山頂までの登り返しだ。昨日と同じ北風が吹き荒れる斜面をいっきに登る。
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朝の山頂に立つ登山者 |
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山頂からの下り。遠くに海が輝いている。 |
山頂では多くの登山者が朝の見晴を楽しんでいたが、残念なことに富士山は霞んで見えない。しばらく登山者同士で写真撮影を交換し、山頂に別れを告げ、朝日に輝く登山道を下り、鴨沢に戻ったのは11時45分であった。駐車場で残った食料で一人打ち上げをした。
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登山道からアスファルトの路へ |
反省
1.冬の登山は食事はパンなど簡単にとれるもの。オニギリは凍ってしまう。
2.1日の水分は500ミリリットルの湯で充分。
3.冬山はやはり冬用の登山靴をはくべき。今回、普段のトレッキングシューズで歩いたが、朝の山頂では足が冷たく感じた。もし吹雪いていたら大変だったと思う。
4.冬山のアンダーはウールが一番。汗をかいても冷えないし、着たまま乾かせる。上は重ね着で調整すべし。今回朝の下山開始時はアウターから4枚着ていたが、里に下りたときは2枚であった。
5.手袋もレイヤリングで調整するのがいい。予備は必携。次回、ワークマンで売っている1280円の防寒手袋を試してみよう。
予感
その他、今回の山行のため1週間前に丹沢の檜洞を周回して訓練したのがよかった。新しいアイゼンの練習、服装、食事などいい経験であった。また天候だが、予報が晴れでも山頂は全く異なることがあるので要注意。とくに晴れていても風が吹いていると体感気温はかなり下がる。
今シーズン、あと何回か雪山にいくつもりだ。病み付きの予感。
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