〆は八ヶ岳
2015年10月2日、3日、今年最後の泊まり山行は八ヶ岳のキレット小屋。コースは清里側、真教寺尾根にある
八ヶ岳最強鎖場を登り赤岳へ。赤岳から権現岳に連なるキレットを降下し、鞍部にあるキレット小屋に泊まる。翌日はキレットを抜け、
八ヶ岳最強ハシゴ段を登り権現岳へ。そして天王寺尾根を下る。紅葉の八ヶ岳、未踏破のキレット越えなど楽しみ満載である。
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コース核心部、権現岳より振り返る |
出だしからつまづく
朝早くにタクシーで真教寺尾根の取り付きまで。快晴だ。しかし、下車早々に分かれ道を見失いヤブコキすること1.5時間、最初からどうもケチがついた。登山道をようやく発見したのが8時30分、まだこの時間ならば決定的なロスではないと、そのまま真教寺尾根を登る。赤岳は手前の牛首山に隠れて見えない。まずはその牛首山を登る。
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尾根から富士を遠望。今回はこのように常に富士が見えていた。 |
牛首山とは気持ちの悪い名の山だ。単調な尾根登りを続け、牛首山に到着。道迷いのロスもあるので休憩もそこそこに平らな尾根歩きを続ける。ここからは前方の木々の間から目指す赤岳が見えてくる。まだまだ遠くに見えるのだが、その姿はまさに立ちはだかるかのようだ。歩を進めるに従いその姿はズーム倍率をあげるかのように徐々に迫ってくる。あの急斜面を登れるのだろうか。どうやって登るのだろうか。おまけに強風が木々をごうごうと鳴らす。強風、迫る崖、遅れ、私の頭に撤退の二文字がよぎる。とにかく12時までは登りつづけよう。そこで決断しよう。
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木々の間から見える赤岳。いったいどうやって登るのか。 |
いよいよ鎖場だ
やがて道は厳しい登りとなる。いよいよ真教寺尾根の核心部に達したようだ。この尾根はまさに修験者たちの修練の尾根。まっすぐに直線的に登る。やがて下りてくる登山者が現れたので風の様子を聞くと「帽子が飛ばされる程度」とのこと。これで風を理由の撤退はできなくなった。次に外人さんが下りてきた。目を丸くして「コノサキスゴイヨ」と鎖を両手でつかむジェスチャーをしながら話す。
いよいよか、八ヶ岳最強の鎖場が始まるぞ。
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この鎖場が最も長いといわれている |
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近くより見上げるとこうなる |
やがて斜面に固定された最初の鎖が現れる。その後は行けども行けども鎖が途切れることがない。やっと登りきると次の鎖場が待っている。鎖場の基本は三点確保。ところが途中から脚の踏ん張りが利かなくなっている。疲れきっているのだ。こうなると両手で鎖を掴み腕力で登っていく。そんな厳しい鎖場が次から次へと現れる。あとどのくらい登るのか。
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右下に8合目の看板。赤線の上に9合目の看板がある |
高度計を見ると頂上まであと200ほど。だったら100登る毎に休めばいいのか。などと考えてもみたが、100なんてとんでもない。鎖場ひとつクリアするたびに座り込んでしまう。ああなんでこんなところに来てしまったのか。戻るに戻れない。登るしかないが、登れない。ここが最後かと踏ん張って登りきると、容赦なく次の鎖場が現れる。自分に鞭打ちながら、気を取り直し、いくつ鎖場を登ったことだろう。ようやく尾根道が見えてきた。ああ本当にこれが最後だ。残る力をすべて出し切り、尾根の登山道に達した瞬間にへたり込んでしまった。時間は13時30分。コースタイムをはるかにオーバーだ。
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真教寺尾根を登りきったところ。中央下に最後の鎖が見える |
キレット小屋へ
尾根との合流点に達し、道標はキレット方面と山頂方面とを指している。ここで今日の予定を変更して山頂の小屋に泊まることを検討。しかし大休止の後、自然と脚はキレット小屋に向ってしまった。(山頂はオミット)。
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キレット下り開始。赤い矢印のところがキレット小屋。前方中央が権現岳。 |
キレット小山までは長い急斜面のガレ場が落ち込んでいる。鎖場も、ハシゴもある。ああ、もう鎖場はうんざりだ。鎖を見ると身体が拒否反応をおこす。しかしこの下りは目指すキレット小屋が下方に見えている。あともう少し、さあ頑張れと自分を励ましキレット小屋に到着したのは15時30分であった。
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またもや鎖場が。けっこうな高度感。 |
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鎖場のあとはガレバ下り |
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ようやく小屋に到着 |
家族的な小屋
キレット小屋は小さな小屋。小屋番も一人。すいている。夕食は座敷にある蒔ストーブで小屋番自ら白米を炊く。その前につまみが振舞われ皆で宴会がはじまる。私のテーブルは単独行の3人。なんとその中の若い男は私と同じコースを歩き、この小屋に昼前に到着したとのこと。すごいな。なんて話しながら、お互いの山話しに会話がはずむ。やがてご飯も炊き上がり、カレーを食べていると、宿泊者の1人が「赤岳が真っ赤だ!」と叫ぶ。皆カメラを手に外に飛び出し、夕映えに真っ赤になった赤岳を見上げる。あそこから来た人、これから登る人、思いはそれぞれだ。
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手前の薪ストーブでご飯を炊く |
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燃える赤岳 |
10月3日、翌朝も快晴。ご来光を小屋から眺める。朝食もそれぞれの時間に合わせて小屋番さんが用意をしてくれる。前夜の食事時に出発時間をそれぞれ確認してくれるのだ。まるでホテルなみのサービスではないか。ほんとうに気持ちのいい小屋だ。そして出発時には小屋番さんのカメラで出発の様子を撮影してくれる。後日に写真を送ってくれるそうだ。ありがとうキレット小屋。実にさわやかな出発となった。
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窓からご来光を見る |
さあ、今日はキレットの後半、権現岳を目指す。私が山登りを始めたとき、権現岳から見たあの長いハシゴ段が待っている。あの時は実に恐ろしい思いで眺めたが、山の経験を積むうちに、いつかあのハシゴ段を経験してみたいと思うようになっていた。私の成長の証しか。今日はそのハシゴ段を登るのだ。
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ハイマツの尾根道 |
最強のハシゴ現る
絶景を満喫しながらキレット尾根道を権現岳に向かって歩く。左手には昨日登った真教寺尾根もよく見える。いくつかの鎖場をクリアし、やがて権現岳直下のハシゴ段が見えてくる。八ヶ岳最強のハシゴ段だ。登山者が一人、難儀しながら下っているのが見える。怖いのだろう。直下まで行き、見上げると、さすがに長い。ここを登のは恐怖心との戦いだ。よし、絶対に下を見ない。ただ前面の岩壁を見ながら段数を勘定する。1,2,3と数え、61段目に登りきった。
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前方斜面に長いハシゴを登山者が下りている |
とうとうキレットを走破した。見返すと歩いてきたV字の尾根道がよく見える。これは北アルプスの大キレットにも負けないのではないか。標高差も同じぐらいだ。まあ私としては人気がないほうがいい。あの家族的なキレット小屋を大切にしたい。
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権現岳山頂を見上げる |
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ピークは立つこともできない |
権現岳からはひたすら天女山尾根を下る。いままでとは打って変わってカラマツ林の単調な下り。ほぼコースタイムで天女山駐車場に下山した。
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天女山尾根にて |
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さらば八ヶ岳、長坂インターにて |
反省をこめて
探検家は、この先を行くと戻れないポイントを越えていく勇気があるとどこかの本に書かれていた。だから探検なのだ。探検家はそれを勇気と美化される。われわれ素人登山者がそれをすると無謀といわれる。私は真教寺尾根でその無謀をしてしまったのだろうか。素人は戻れないポイントを超えるなんて絶対にしてはいけない。そのポイントは時間、距離、装備の他に体力にもあることを学んだ。そもそも出発早々の道迷いで1.5時間も時間と体力をロスしたのがいけない。この時点で計画を変更するべきだったのだと思う。来年、反省をこめて、また真教寺尾根を登ろうかな。いやいやまだ懲りないのか。もうやめておけ、ともう一人の自分が語りかける。
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