親戚が宮城県にあるためお盆の帰省を利用して東北の山々を歩いている。かって山歩きを始めたころチャレンジしたのが早池峰山と岩手山。東北の山々は森林限界が低いため中腹から上はお花畑が広がっている。この両山にもお花畑の綺麗な花々が印象的だ。今年はこの両山を再訪し登山を始めたころの思い出をなぞってみることにした。
2014年8月12日岩手山へ
台風12号の影響で東北は午後から小雨とのこと。ならば朝早くに出発すれば大丈夫との判断で、距離が短い馬返しからピストンで登ることにした。ここは年前に歩いたことがあるが、斜面をいっきに直登するかなりきついコースである。
朝6時、馬返しの駐車場着。見上げると正面に岩手山が雲間に見え隠れしている。悪天の予感。すでに駐車場には車がまばらに置かれている。支度を調え登りは旧道、下りは新道で歩くことにする。登山道は1合毎に道標が設置されているのでわかりやすい。2.5合で道は新旧に分かれる。ここから登山道は溶岩礫のザレた急登となる。旧道のザレた急斜面を滝沢村を背にしながら登り、いっきに標高をあげる。やがて8合目避難小屋手前で新道と合流し(7合目)お花畑の中を歩いて避難小屋に至る。
前回同じルートを歩いたとはいえ、道々の風景は新鮮で、印象を新たにしながら歩く。100名山走破などとアリバイ的に山を登ることは意味のないことだとあらためて実感する。山はその時々で姿を変えるし、登る自分もその時々で気分が変わる。山登りはその時々の山と自分の出会いなのだと思う。
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溶岩礫の急斜面より滝沢村を見下ろす |
避難小屋から山頂は強風との戦いであった。耐風姿勢のまま山頂を目指す。あまりもの風の強さに歩をすすめられずその場で立ち止まることも。進むべきか退くべきか、何年か前の朝日連邦での強風との戦いを思い出す。あの時は隣の同行者との会話も聞こえなかった。それに比べれば今回はまだマシかななどと思い一歩一歩と歩を進める。強風吹き荒れる山頂に着いたのは11時。風で霧が飛ばされたお陰か、お鉢回りの火口はよく見下ろせた。いままで霧に包まれた山頂ばかりであったが岩手山登山3回目にして初め見る火口だ。
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火口を見下ろす |
それはまるで火山爆発の模型のような見事な地形だ。爆発で引き裂かれ、どす黒くむき出しになった岩、えぐられた地底、生きている火山の息吹を感ずる。よくみると火口の底部に神社の廃墟があり、お鉢回りからの登山道もある。天候が気になるが、せっかくだから火口に下りて神社を訪問することにした。しばし火口底部の登山道を歩き廃墟に達する。廃墟にはいくつもの石碑らしきものが屹立していたり崩れ倒れたりしている。飾られた祠もある。過去の賑わいも思い浮かばれ、風にさらされた無人の廃墟は実に霊的だ。
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お鉢周りより8合目避難小屋を見下ろす |
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雲に包まれた岩手山 |
雨雲らしきものが迫ってきたので、下山開始(12時)。新道を下る。ランチ時の避難小屋は賑っているのだが天候のせいか人はまばらだ。風が強いため八合目避難小屋はそのまま通過し新道の途中の木陰でランチをとった。八合目避難小屋は平らで眺めがいいところに建っているので受ける風も強いのだ。溶岩瓦礫のバリエーション豊かな旧道に比べ新道は単調な下りだ。7合目、6合目と道標を通過し、小雨が降る馬返しに下りたのは15時半だった。駐車場の隣にはキャンプ場が併設されており、テントがいくつか並んでいた。水場もあるし、トイレもしっかりしている。かれらはここで一夜を明かすのだろう。私はもう一度雲に包まれた岩手山を仰ぎ見て、車で早池峰山登山口に向かう。
2014年8月13日早池峰山
前日岩手山より車で早池峰山登山口、河原坊に移動。コンビニでビールと弁当を買い駐車場で夕食とする。すでに駐車場には車がまばらにとまってる。前回早池峰山に登ったときも前夜はこの駐車場で車中泊であった。どの車も思い思いに夜を過ごしている様子は前回と変わらない雰囲気だ。ここは携帯電波もとどかない、かなり山深いところである。閉ざされた山中の駐車場は静かに霧に包まれている。
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霧に包まれた夕暮れの駐車場 |
朝6時起床。すでに出発している登山者もいるが、早池峰山は霧に包まれて全く見えない。予報だと9時ごろから晴れとのこと。ならば急ぐ必要はない。ゆっくりと支度を調えて6時半に出発。河原坊から登り、小打越へ下ることにする。
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山頂は雲に包まれている |
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鎖場 |
河原坊からの登り道は急こう配のため、地元のガイドブックにも、下りでは使うなと書かれている。いきなり渡渉もあり、登るにつれ勾配が急になるこのコースはかなりきつい。しかし、岩間にたくさんの花々が疲れを癒してくれる。撮影タイムが休憩タイム。
前日の岩手山ほどではないが風が吹き荒れ、見上げれど山頂は雲に包まれたままである。しかし、急こう配故に、歩いただけ確実に高度を上げているのは判る。中腹より完全に森林限界を超え岩山となる。浮石に気をつけながらロープで指示された登山道をまさに一歩一歩と登っていく。名前のついたいくつかの巨岩の間を抜け、歩を進めるといきなり山頂の赤い祠の前にでた。あっけない登頂だった。山頂は雲の中であった。
昨夜駐車場で同じ多摩ナンバー故に挨拶をかわした男性と山頂であった。ストーブでラーメンを作っている。花がきれいでしたねと言うと、そうだったですかとの答え。山の中で何を感ずるかは人によってちがうことを痛感。彼は山頂のラーメンタイムが至福の時なんだろう。それも悪くはない。
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山頂の様子 |
山頂は狭い。登ってくる人、下る人、で動きが活発だ。休みもそこそこに小田越に向かって下山開始。早池峰山は高山植物を保護するため登山道は左右にロ^プが張られているので迷うことはない。ロープの間を歩いていけば確実に下りられる。下りのコースは登りより傾斜は緩やかであるので、楽しみながら下れる。途中、長いハシゴ場があるが、怖いことはない。確実に高度をさげ、中腹より雲の下にでたためか、小田越の緑の森と避難小屋がはっきりと見えてきた。下るにつれ傾斜は緩やかになり、森林を抜けたら小田越登山口にでた。11時半だった。そのあとはアスファルト道路を歩くこと30分で河原坊に達した。駐車場にある水場でランチをとり、昨日からの山歩きを思い浮かべ、今年の東北の山歩きは終わった。多摩ナンバーの男と手を振りあって別れの挨拶をかわす。
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水場でのランチ。今回の山行の〆
おまけ画像
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小田越に向かって下る。遠くに小屋が見える。正面は薬師岳 |
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このような花がアチコチに咲いていた |
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