人にやさしいアルコールバーナー

アルコールバーナーの魅力

ガスバーバーとはちがう美的な魅力

私は一人歩きのときはアルコールバーナーを愛用している。よく休憩ポイントではおもむろにザックからガスタンクとストーブを取り出して、クッカーで調理を始める人が多い。殆どの人はラーメンを作る。これからは寒くなるので、山で湯を沸かす人はますます多くなるだろう。バーナーの先端からシューという噴出音と紫色の炎が噴き出し、時間を競うようにクッカーで湯を沸かし始める。あちこちでシューシューという音がするなかで、私は小さなアルコールバーナーを取り出して、ゴトクでそれを囲み、揺れる炎でシエラカップに湯を沸かす。確かに見るからに火力も弱いし、1回当たりの燃焼時間に制約もある。しかし山でのゆっくりとした時間を過ごすにはアルコールの炎は人の心を和らげてくれる。アルコールバーナーは燃焼性能に勝る魅力があると思う。鉄道でいうならば鈍行の楽しさみたいなものか。あるいはスペックだとかデータでは語ることのできない、心に溶け込む優しさか。この際だからガスとアルコールを比較してみることにした。

まずは外観比較

組み立て前の姿、白い容器にアルコールを入れている




組み立て後の姿
ご覧の通り、ザックに入れるときのボリュームは両者とも殆ど変わりがない。重さも殆ど同じ。ただガスはタンクが決定的に大きいがアルコールの場合はそれぞれが小さいのでザックの中に適当に隙間をみつけてしまうことができる。ガスの場合はタンクにバーナーを取り付けると背が高くなり安定感がない。

燃焼の様子

アルコールの優しい炎

激しく燃焼するガスバーナー
ご覧のとおり、ガスは激しく燃焼し、高温で湯を沸かすのがよく判る。アルコールはめらめらと炎がカップの底をはっている。不純物がないので、煙はでない。愛用のシエラカップの広さはCDを上蓋にのせるのにちょうどいい広さだ。無用になったCDをいつも持ち歩いている。

燃焼比較結果

カップ麺を作ることを想定して300ccの水を沸騰させる時間を測定した。上蓋のCDはつけなかった。結果はアルコールが7分、ガスが3.5分であった。データではアルコールはガスに比べ倍の時間がかかることになる。カップ麺を作ることを想定したらその違いは3.5分である。これが耐えられない差なのかどうか。

実用上の問題

実用上もっとも大きな差は1回に沸かせる湯の量と時間だと思う。今回の実験でも明らかになったのだが、アルコールの場合、300ccの湯を1回沸かすのが精一杯。時間にして7分程度。だからアルコールで煮炊きはまず不可能ではないか。アルコールの場合はせいぜい、アルファー米とか湯で戻す食材を作ったり、茶を沸かす程度にしか使えない。しかしアルコールの場合は容器に入れて持ち歩きができるので、容器に常に一定の量を入れておけば燃料切れの心配ない。私の場合だいたい100ccぐらいのアルコールを持ち歩いている。ガスの場合、カートリッジに中途半端に残った燃料の判断が難しい。あとどのくらい燃焼時間が残っているのか判らないから。

エタノールアルコールは消毒液にも使われているので、万一の場合は消毒液にも使える。
安価なアルコールはアマゾンで売っている「燃料用アルコール」。500mlで386円。これを使えばコストはガスに比べアルコールの方が圧倒的に安い。

アルコールバーナーはガスバーナーに比べ安価である。愛用のバーナーはスウェーデンのトランギア社のもの。定価2400円。山用品の店ならどこでも置いている。

環境への負荷

ガスのカートリッジは使いきりが原則とはいえ、中途半端に残った燃料の判断がむずかしい。結局は穴をあけ、燃えないゴミとして捨てることになる。(お店によっては回収しているみたいだが)。リサイクルが確立されていない。しかしアルコールの場合は残った燃料は容器に戻し、また使うので廃棄物はいっさいでない。それからアルコールは植物由来だしすぐに蒸発してしまうので万一こぼれても環境への負荷は殆どない。

結論

アルコールの決定的な欠点として1回当たりの燃焼時間が短いことがいえる。確か加藤文太郎も雪山でアルコールバーナーを使っていたと思う。先駆者たちはどのようにして使っていたのだろうか。もっと工夫すればさらに実用的になるのではないか。アルコールの利点として外気温による影響がないこと。これから冬に向ってさらに工夫を重ねていきたいと思う。

 





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