新雪の大菩薩へ

今期最後のバス運行(2014年12月6日)

「いいですねえ、それ行きましょう」。簡単に今回のコースは決まった。笹子側から大菩薩嶺の石丸峠を抜けて小菅まで歩くルートだ。なぜいいのか、よくわからないが、ノリで決まった。そうと決まっても小菅からのバスは12月第2週までで冬季運休となってしまう。今週がその第2週だ。あとは来年4月まで待たなくてはいけない。いま行くしかない。
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バスを降りたら雪だった

八王子発6時35分の松本行き列車はすっかりお馴染みになった。今日もこの列車で大菩薩へ。1時間ほどで笹子トンネルを抜けて甲斐大和駅に着く。
朝6時すぎの八王子駅。まだ薄暗い。

さらに駅からバスで大菩薩嶺の登山口である小屋平へ。このバスに乗るのは全員が登山者である。小さなバスが補助椅子まで使って満員となる。
満員のバス

バスは大菩薩嶺に向かってどんどんと標高を上げていく。が、標高を上げるに従いなんと回りは薄っすらと白くなっていくではないか。雪が降ったらしい。はじめは薄っすらと白くなっていたが、だんだんに一面銀世界となっていくではないか。まいった。不覚にもアイゼンを持ってきていない。バスを降り、あらためて雪の様子を見る。新雪だ。薄く地面を覆っている。とりあえずアイゼンなしでも歩けそうだ。同行者のMさんと、とにかくいけるところまで行こうということになった。バスから降りた他の客も皆歩き始める。今日の登りはここから石丸峠まで200m程度、あとは小菅に下るだけだから大丈夫だろう。
とりあえずスタート

銀世界を堪能する
少し歩いたところで、今日はアイゼンは使わなくても歩けることを確信した。まだ新雪なので踏みつけると靴底は地面にしっかりと接地する。心配事がなくなったので、さあ、あとは天気もいいし、この銀世界を堪能しよう。100mほどで急登の針葉樹林帯を抜けると裸の広葉樹林帯となり、なだらかな登りとなる。ここからいっきに景色が開け、ふたりとも歓声をあげる。正面に目指す石丸峠、左上には大菩薩嶺、右には富士山が展望できる。いまこの天上ですばらしい銀色の景色を堪能できる喜びをかみしめる。
斜面、林の中に歩いてきた道が見える

小金沢方面


今回はめずらしくMさんもカメラを出して撮影する。彼、プロのカメラマンのくせして、いままで山ではほとんどカメラをだすことはなかった。自然の織り成す不思議な模様を撮るとか。なるほど、この銀世界には素材は沢山ある。

石丸峠から先は皆それぞれ

石丸峠分岐、前方林の中が小菅方面、左が大菩薩方面

石丸峠は小菅へ抜ける峠道だが、大菩薩嶺への尾根ルート、小金沢へのルートへの分岐点でもある。雪上のトレースを見ると私たちの目指す小菅へのルートが最も少ない。そうだろう、小菅に抜けるなんて、ここでこの銀世界ともお別れだし、大菩薩嶺の上を歩いたらどんなに気持ちがいいか。それに小金沢は500円札に出てくる富士が見える。初訪問にして、もっともマイナーなルートを選ぶ渋さよ。ただただ小菅に抜けるという意味にこだわる。渋い中高年の二人連れは絶景を背に樹林帯に消えていく。
小菅方面の標識(牛の寝通り)

大菩薩峠考察

大菩薩といえば我々の世代は中里介山の「大菩薩峠」を連想する。映画では市川雷蔵主演だった。実に長い小説で、これを読破するにはかなりの根性を必要とする。私も読んではいないが、たしか大菩薩峠が甲州街道からはずれた裏街道に当たることが小説の舞台設定になっていたと思う。このところ奥多摩とか、高尾、笹子方面の山々を歩いていたので、この地理的設定がよく理解できる。昔、甲州に入るには甲州街道で八王子から笹子峠を越すのがメインルートであったが、青梅から大菩薩峠を抜けて甲州に入るルートが裏ルート。確かに歩いてみると道は案外となだらかで楽に甲州に入れることが判る。でもお侍さんが刀をさしてこの峠道を歩くのは大変だっただろうなあ。

小菅へ

石丸峠を抜け、あとは小菅へ長い尾根下りとなる。400mほど下ったあと、「牛の寝通り」という名の広くて長い、そして平らな尾根道を延々と歩く。裸の紅葉樹林帯だ。東京と山梨の県境でもある。木々の間に遠くの山並みを眺めながら歩く。
秋を新雪が覆う

適当な場所で倒木に腰掛け、ランチを作る。ランチ作りに夢中になっていたのでついつい画像を残さなかったのが悔やまれる。私はカレーメシに挑戦。彼は野菜スープだ。いつものことだが、彼は本格的な料理を持ってきてくれるので嬉しい。ランチの後、あのカレーメシを山でいかに上手に作るかなどとバカみたいな会話をしながら歩く。
広くて長い尾根道

小雪舞う小菅に下りたときは2時50分であった。15時20分発、上野原行きのバスを待つ。このバスも明日が最終便となり、小菅は永い冬となる。



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