東北の山は春烈々(栗駒山、焼石岳)



2015年5月ゴールデンウィークは妻の実家に滞在。今年の連休は気温が異常に暖かい。山の雪の状態を心配したが、晴天に恵まれすばらしい雪山歩きができた。青い空の下、緑の新緑に囲まれ、白い残雪の上をサクサクと、至福の春山歩きができた。これまでの数ある山の思い出のなかでも最も忘れがたい山行となった。

焼石岳に咲いていた青い可憐な花

栗駒山(2015年5月1日

栗駒山は裾野の田園地帯にひときわ大きく鎮座している。農家である妻の実家も春になると栗駒山の雪の模様を見て農作業の時期を判断したとのこと。それは決して牧歌的な話ではなく、厳しい気候の下で農業を営む人々の貴重な判断材料だったのだろう。また山に駒という名を入れるのも農村信仰の表れだ。そのように栗駒山は人々たちの生活と一体となっていた山であったことが伺われる。
麓のいちご畑より栗駒山を見上げる

冬の間、栗駒山へのアクセス道路は閉鎖される。春の訪れとともに(5月の連休から)、昼間のみ時間限定で通行できる。栗駒山への登山ルートは南側のイワカガミ平と北側の須川温泉からの二ルート。その二つの登山口に向かってそれぞれドライブウェイが開通しているのだ。私はイワカガミ平から登ることにした。
雪解けが始まった栗駒の尾根と原生林

今日は晴天が約束されている。風もない。絶好の登山日和だ。青空に映える栗駒山を見上げながらドライブウェイを車は九十九折のカーブを登り高度をあげていく。ドライブウェイの両脇には削り取られた雪壁が切り立っている。9時、終点のイワカガミ平の駐車場に着く。駐車場ではすでに栗駒山を目指す登山者がみな思い思いの支度をしていた。スキーで登る人、ソリを背負った人、犬を連れた人、普通の山歩きをする人。皆思い思いの支度をしている。風もなく暖かなので、私は上着を一枚脱ぎ、念のためザックにアイゼンを入れ、さあ出発。
イワカガミ平駐車場より登山スタート

イワカガミ平の登山道はいきなり雪原を歩く。いわゆる冬道だ。夏道の中央コースは岩が露出してむしろ歩きにくい。雪の上をひたすら頂上を目指して登り続ける。雪上の踏み跡が登山ルートだ。アイゼンを付けずにキックステップで歩く。冷たい風が温まった身体に心地よい。
高校生のグループ

道路の開通時間と同時に入山したので、多くの登山者が前後して登っている。賑やかだ。高校生のグループ、犬を連れた人。犬も大喜びだ。足元の雪の間からはイワカガミの葉が露出している。きっともうすぐこのイワカガミが一斉にピンク色の花を咲かすのだろう。
一面にイワカガミが広がっている(その先は山頂)

左右には雪とまだら模様になった栗駒の尾根と原生林が広がっている。景色を楽しみながら登りつづけると、やがて山頂が目の前に迫ってきた。登り初めてまだ1時間半程度。もう山頂とは、もったいない気分だ。もっともっとこの雪原を登り続けたい。やがて山頂に上り詰めたが、当然のごとく私はそのまま尾根歩きを続ける。
山頂手前で一時停止する登山者

山頂から向こうを見下ろすと須川温泉、さらにその向こうは雪に覆われた神室山や鳥海山。振り向いて登ってきた斜面を見下ろすと、田園地帯が広がる。私は尾根を西方の秣岳方面へと歩く。やがて尾根道は須川温泉方面からのルートと合流する。見ると下から須川温泉からの登山者が点々と登ってくる。私は引かれるように須川温泉方面へ下っていく。登ってくる登山者たちとあいさつを交わしながら下る。なかには今年はこれで栗駒も7回目という登山者もいた。
須川温泉方面からの登山者。遠くは焼石岳方面。

雪面の下りは雪がクッションになるので膝にやさしい下りだ。更に下り、中腹辺りで後方の山頂を見上げるとけっこう下ったことが判る。もういいだろう、今年の栗駒山は満喫した。明日は焼石岳に登るし体力温存だ。踵を返し踏み跡をたどりふたたび山頂を目指した。山頂に到達したのは12時30分ごろだった。山頂は雪が融け岩が露出している。草陰に腰をおろしてランチを食し、下りは地面の露出した夏道を選んだ。
山頂より太平洋方面

焼石岳(5月2日)

連休もまだまだ続く。昨日に続き今日も晴天が約束されている。今日は焼石岳だ。この時期の登山道はツブ沼からの1本だけ。かなりロングだ。頂上までは5時間以上かかる。せめて中腹の銀名水までいってみようか。3時間以上歩いてでも訪ねる価値がある名水だ。
雪の間からこんこんと湧き出る銀名水。この名水を飲むために。

東北道の前沢インターを出てツブ沼の登山口に到着したのは6時半。すでに数台の車が置いてある。登山口の道標はないが、ここが登山口であることは明らかだ。昨日のイワカガミ平よりは標高は低いので雪は見えない。まずは新緑の萌える原生林を登り始める。昨日と異なり人影は全く見えない。こうなると怖いのは熊だ。オーイ、オーイと声を張り上げながら歩く。熊さん逃げてくださいよ、人間が来ましたよ。30分ほど歩くと後ろから水沢高校登山部の若者たちが整然と隊列を組み私を追い越していく。なるほど、彼らの後を歩けば熊との遭遇の心配はない。
原生林を先行する高校登山部

高校生たちはどんどん私を引き離して先にいってしまった。私はマイペースを守る。ちょっと危険なトラバースを歩いたり、沢を渡ったり、標高を上げていくと、やがて登山道は雪の原生林となる。目の前には白い雪原のブナ林が広がる。
新緑のブナ林

この後は先行者の踏み跡と、ところどころに吊るされている赤テープだけが頼りだ。小鳥のさえずりとザクザクと私の靴音だけが林に響く。赤テープを探しながら原生林を歩き続ける。やがて登山道は小さな沼を見下ろす尾根を上り詰めた。向こうを見下ろすと石沼が見える。石沼はブルーの曇りガラスのような氷に覆われている。氷面の雪が融け、沼の水が氷を透かしているのだろう。なんと神秘的な色なんだ。さらに沼の向こうには真っ白な尾根が連なっている。まさにこの場に立たなくてはこの神秘的な世界を見ることはできない。この場に立たずして、この世界を誰が想像できるだろう。感動のあまり、足をとめ、しばしこの神秘世界を眺める。
下に見えるのが石沼。遠くが焼石岳から連なる尾根。

目指す銀名水は夏のメジャーコースを使い何回も登っているので大体の場所は判別できる。確か森林限界に達した辺りだ。遠くを見るとまだまだ先である。いつまでも神秘世界に浸っているわけにはいかない。気を引き締めて、さあ登攀再開だ。
引続き白い雪原を歩き続けると、やがて道標が雪面から出ていた。銀名水まで1.9Kとある。まだ中間点を少し過ぎたところだ。しかしこの先は傾斜もゆるやかなので、1時間ほどで着くだろう。少しペースをあげる。
ひょっこりと道標がでていた

高度を上げるに従い木々の密度もだんだんに疎らとなり森林限界も近いことを確信。焼石岳の尾根がはっきりと見通せるようになる。さらに雪原の斜面を踏み跡をたどり歩き続けると、やがて潅木に囲まれた銀名水避難小屋が見えてきた。
森林限界に建つ避難小屋。銀名水より撮る。

10時、銀名水に到達。泉のほとりで先行していた高校生たちがザックを下ろして身体を休めていた。足元の雪の間から、こんこんと名水が湧き出ている。いままで山でいろいろな湧水を飲んできたが、この銀名水はまさに名水の名に値する。美味しい水とは何か、この銀名水を飲んでみると体験できる。甘く柔らかで、身体に浸み込むようだ。泉に常置してある重い金属製の柄杓を持ちこの名水をごくごくと飲んだとき私の焼石岳山行は終わった。頂上を目指す高校生の隊列を見送り、私はひとり原生林の静寂へ下り始めた。
高校生たちの健闘を祈る

花、風景

今年の東北の春は異常に高温だ。ゴールデンウィークはいつもならコシアブラなどの山菜が採りごろなのだが、もう葉を開いてしまっている。山の雪も昨年にくらべ少ない。このような異常気温の年は冷夏となるのではと地元では心配している。
この異常気温は山の花々の開花にも影響しているようだ。たしかに里ではカタクリはもう咲き終わっていた。以下は今回の東北行でのスナップだ。
カタクリの群生(岩手県の里山で)

ショウジョウバカマ(焼石岳)

多分、シロヤシオです(栗駒山)

イワウチワ(焼石岳)

山麓の沼に咲く水芭蕉


鳴子こけし
バス停。岩手県最奥にて。

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