静寂の鍋割山尾根歩き



久しぶりの丹沢

2019年1月13日
前日は小雪が舞った。
よし、丹沢へ登ってみよう。
一路東名高速で秦野中井インターへ。
インターを出て、表尾根の山並みを見上げながらコースを考える。
フロントガラスを透して白化粧した尾根が見える。期待で胸が騒ぐ。
今日は鍋割から塔ノ岳を目指すことに。
一路登山口の「県民の森」へハンドルを回す。

鍋割山尾根から雨山峠方面

駐車場からは四十八瀬川沿いの西山林道を30分ほど歩いくと林道終点となる。ここからは名実共に登山道になる。
鍋割山への尾根道の最初のポイント後沢乗越に至りしばし小休止。ここからは鍋割山への急登だ。
もう何回も登ったおなじみの尾根だ。
高度を上げるに従い登山道を新雪が薄く覆う。いよいよこの先へ期待が増す。早くも下山してきた若者に聞くと「尾根は真っ白。だけどアイゼンは使わないでも大丈夫」とのこと。なんだ積雪はたいしたことはないようだ。すこし期待外れだ。今日はサクサクと新雪を踏んで歩きたかったのに。でも真っ白という言葉を頼りに登り続ける。
中腹から薄っすらと新雪が

鍋割山山頂

やがて登山道は2センチほどの積雪となり、辺りは一面の銀世界となる。
いつもの木道を登ると鍋割山に到着。天気がよければ遠く富士と南アルプスの山並が遠望できるのだが今日は靄に隠れている。残念だ。見下ろすと相模湾が雲の下に暗く輝いている。ベンチでは登山者が思い思いの休憩をとっている。なぜかここではいつもグループ登山の人達は名物の鍋焼うどんを食べている。彼らはきっと仲間とこれを食べたくてここまで来たのだろう。彼らのために先ほどのボッカが食材を上げているのか。でも私は鍋割山だから鍋焼きうどんなどというダジャレみたいな結びつけに抵抗がある。なんか「商売」の臭いを感じる。富士山も見えないし、今日は小休止のあとそのまま塔ノ岳に向かう。
鍋割山山荘

尾根歩き

ここからは尾根歩き。本日の佳境だ。左前方に丹沢主脈、左下方にユーシン渓谷、右下方に相模湾を見下ろし雪化粧の尾根道を歩く。冷たい静寂が漂う。すれ違う登山者ともお互いに無言の挨拶だ。今日は単独の登山者が多い。きっと私と同じように一人で静寂を求めてきたのだろう。左前方には塔ノ岳が、さらに奥へと山並みを追うと丹沢山、蛭ヶ岳が展望できる。やはり冬の丹沢はいいなあ。キリッと身も心も引き締まる。夏の丹沢はただただ熱いだけだ。汗まみれで敗残兵みたいなヨレヨレ歩きになってしまう。今日は冷気に包まれた静寂のなかを静かに歩を進める。
新雪に覆われた笹

時計をはずし

今日は時計も地図も持たず体内時計のみで歩いている。これは登山者としては危険な行為である。しかし腕時計とかコースタイムとか地図に縛られずに歩くのもいいものだ。何度も歩いた道を雪が降ったので一人で訪ねてみる。こういう山歩きがあってもいいのではないか。時間はいままでの経験値と体内時計が頼り。いま自分はこの山と一体だ。

大倉尾根を行きかう登山者

塔ノ岳

大丸、小丸と小ピークを超えてやがて大倉尾根の登山道と合流。ここからは大倉尾根を登ってきた大勢の登山者が加わり賑やかな山に一変。彼らはみな最後の登りに一生懸命だ。私はそんな彼らと列をなして最後の木段を登り塔ノ岳山頂に着いた。山頂広場ではいつもと同じ賑わいが待っていた。残念だが富士山もまだ靄の中に隠れて姿を見せない。私は西からの冷たい風を避け定番の東側斜面のベンチに座りランチをとる。いつもの塔ノ岳タイムに戻った。
塔ノ岳山頂ベンチ


微かに富士が

考察

忠臣蔵の討ち入り場面は雪。雪のもつ演出効果は絶大だ。白い雪は日本人の精神になにか特別の作用を及ぼすのか。冷たさと白さと静けさのセットはお金では買えない。それが山にはあるのだ。そこに行けば出会える。

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